フリーランスとして活躍する中で、自身の仕事やビジネスをさらに拡大し、社会的信用や節税効果などのメリットを享受したいと考える方も多いでしょう。そのためには、フリーランスから法人化することが一つの方法です。しかし、法人化には手続きや費用がかかり、複雑なプロセスが必要とされます。このブログでは、フリーランスが法人化する際の手順や費用、相談相手、メリット・デメリットについて解説していきます。これから法人化を検討しているフリーランスの方へ向けた、役立つ情報をお届けしますので、ぜひご一読ください。
1. フリーランスが法人化するときの手順
フリーランスが法人化するためには、以下の手順を進める必要があります。
1-1. 法人登記の準備
まずは、法人登記の準備を行いましょう。法人登記では、会社の基本情報や事業内容を定款として作成します。定款は会社のルールや運営方法を示すものであり、法務局で作成します。定款の作成には、専門家の助けを借りることもあります。
1-2. 法人登記の申請
定款の作成が完了したら、法人登記の申請を法務局に行います。申請には所定の書類が必要であり、法務局で受理されると法人登記が完了します。
1-3. 税務署や都道府県への申請・手続き
法人登記が完了したら、税務署や都道府県への申請や手続きが必要です。税務署には法人に関わる書類を提出し、都道府県税事務所や市区町村役場には法人設立届を提出します。また、個人事業主の廃業届も提出する必要があります。
1-4. 資産や債務の引き継ぎ
法人化する際には、フリーランスとして持っていた資産や債務を法人に引き継ぎます。これには譲渡や賃貸、現物出資などの方法がありますが、適切に手続きを行うことが重要です。
1-5. 取引先への連絡や契約の見直し
法人化したことを取引先に連絡し、契約を個人から法人へと見直す必要があります。取引先に変更がある場合や契約内容の再確認が必要な場合には、適切に対応しましょう。
1-6. 法人の銀行口座開設
法人としての活動を行うためには、法人の銀行口座を開設する必要があります。銀行口座開設には時間がかかることが一般的なので、余裕を持って手続きを進めましょう。
以上がフリーランスが法人化する際の一般的な手順です。手続きは煩雑な場合もありますので、専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。法人化には費用や手間がかかりますが、社会的信用や節税効果などのメリットを享受することができます。
2. 法人化にかかる費用の目安
法人化する際には、いくつかの費用がかかります。以下に法人化にかかる費用の目安をまとめました。
2.1 法的手続きにかかる費用
法人化には、さまざまな法的な手続きが必要です。以下はその費用の目安です。
- 定款認証時の印紙代: 約40,000円
- 定款認証の手数料(電子の場合): 約50,000円
- 定款の謄本手数料: 約2,000円
- 登録免許税: 150,000円(資本金の0.7%、最低でも15万円)
- 謄本と印鑑証明書取得費: 約2,000円前後
電子定款を作成する場合は、定款印紙税がかからないため、専門家に依頼することがおすすめです。
2.2 資本金の準備にかかる費用
法人化するためには、資本金の準備が必要です。法律上は1円でも可能ですが、社会的信用を得るためには現実的には300万円程度の資本金を用意することが一般的です。
2.3 その他の費用
会社設立に必要な費用や資本金の他にも、細かな部分で費用がかかることもあります。以下はその一例です。
- 専門家にサポートを依頼する場合の費用:(例)弁護士:100,000円、税理士:50,000円、会社設立代行会社:80,000円など
- 会社の年間維持費:(例)オフィスや店舗の賃料や水道光熱費、給料や福利厚生費、法人税や住民税、社会保険料など
これらの費用は、会社設立に直ちに必要ではないものもありますが、計画を立てる際には考慮しておく必要があります。
3. フリーランスの法人化にあたって頼りになる相談相手
フリーランスの方が法人化を考えるときには、様々な専門家の助けを借りることができます。以下では、フリーランスの法人化に関して頼りになる相談相手をご紹介します。
3.1 法務局
法務局では、法人登記に関する一般的な相談に応じてくれます。具体的には、登記申請書の書き方や必要書類についての相談が可能です。ただし、法的な判断や法人登記以外の相談には対応できません。
3.2 公証人役場の公証人
公証人役場では、定款の作成に関する疑問点やアドバイスを受けることができます。ただし、その他の会社設立に関連する相談や法的な判断には応じられません。
3.3 商工会議所
商工会議所は、フリーランスや個人事業主の会員からの相談を受け付けています。彼らは中小企業のサポートを行っており、会社設立や資金調達に関する相談にも乗ってくれます。一部の商工会議所では、無料相談の機会も設けられており、専門家によるアドバイスを受けることもできます。
3.4 司法書士
司法書士には会社設立に関わる手続きを一括で依頼することができます。彼らは会社設立に関連する全ての手続きに対応しています。
3.5 行政書士
行政書士は、公証役場での定款作成や認証の代行、会社設立に関わるアドバイスを提供しています。ただし、登記申請についての代行はできませんが、アドバイスは可能です。
3.6 税理士(公認会計士)
税理士は税金に関する専門家であり、会社設立において書類作成などのアドバイスを提供してくれます。また、税務署関連の届出や手続きの代行も行います。
3.7 弁護士
弁護士は法律の専門家であり、会社設立においても定款の作成や法人登記の代行が可能です。彼らは法務に関する知識を持っています。
3.8 社会保険労務士
社会保険労務士は労務に関する専門家であり、社会保険に関連する手続きを得意としています。彼らは労働基準監督署やハローワーク、年金事務所とのやり取りにおいてもサポートをしてくれます。
3.9 会社設立代行業者
会社設立代行業者は、会社設立に関わる様々な手続きを一括で引き受けてくれる存在です。
3.10 会計ソフト会社が提供するサービスの活用
会計ソフト会社が提供するサービスを活用することもできます。会計ソフトを利用すると、会社設立に必要な書類作成や手続きが簡単に行えます。
フリーランスの方は、自身のニーズに合った相談相手を選ぶことが重要です。それぞれの専門家の得意分野や提供するサービスについて理解し、相談してみましょう。
4. フリーランスが法人化するメリット
法人化することには、フリーランスに以下のようなメリットがあります。
4.1 節税効果が期待できる
法人化による最大のメリットは節税効果です。所得税負担よりも法人税負担のほうが少なくなるため、税金の負担が軽減されます。また、法人税の税率が所得税の税率よりも低い場合があるので、その差分を節税に利用できるのです。
4.2 給与が控除の対象になる
法人化すると、自身に給与を支払うことができます。この給与は給与所得控除の対象となるため、課税所得を減らすことができます。給与所得控除を活用することで、節税効果が得られるのです。
4.3 経費の幅が広がる
法人化すると、利用できる経費が増えます。フリーランスでは認められない経費も、法人組織には認められることがあります。たとえば、出張手当や慶弔費、車や生命保険、従業員への退職金などが経費として計上できるようになります。経費の幅が広がることで、より多くの節税効果が得られるのです。
4.4 赤字の繰り越し控除期間が長くなる
法人化すると、赤字の繰り越し控除期間が長くなります。フリーランスの場合は最大3年間まで赤字を繰り越すことができますが、法人の場合は最大10年間(一部事業年度では最大9年)まで繰り越すことができます。長い繰り越し期間を活用することで、より長期的な節税効果を得ることができるのです。
4.5 消費税の納付が2年間免除される
法人化すると、最大2年間は売上に対する消費税の納付が免除される場合があります。フリーランスの場合、一定の売上を超えると消費税の納付が求められますが、法人化することで納付が2年間免除されるため、節税効果が期待できます。
4.6 信用度が高まる
法人化することで、取引先や金融機関からの信用度が高まります。法人は登記され情報が公開されているため、取引先や金融機関は信用度が高いと判断しやすくなります。信用度が高まることで、より大きな取引が可能になる場合があります。また、金融機関からの融資も積極的になることがあります。
4.7 助成金の利用ができる
法人化すると、助成金の利用が広がります。法人化によって雇用関係が生まれるため、様々な助成金を活用することができます。助成金の利用は経済的な支援となり、経営に大きな助けとなるでしょう。
以上がフリーランスが法人化することによるメリットの一部です。個々の状況や目標に合わせて、法人化のメリットを活かして経営戦略を考えましょう。
5. フリーランスが法人化するデメリット
法人化する際には、いくつかのデメリットが存在します。以下ではそれらについて解説します。
5.1. 課税が必要な赤字
法人化すると、赤字の状態でも課税される場合があります。フリーランスの場合、赤字であれば所得税や住民税の負担がありませんが、法人化すると「法人住民税」が課税されます。また、最低でも約7万円程度の法人住民税が赤字状態でも支払われる必要があります。これは赤字の状態で負担が生じるため、デメリットとなります。
5.2. 複雑な会計処理
法人化すると、会計処理が複雑になります。フリーランスの場合、会計のルールは比較的簡単であり、自身で会計ソフトを使って処理することが多いですが、法人化すると税理士や公認会計士に会計処理を委託する必要があります。そのため、報酬を支払う必要が生じます。法人化することで専門家に頼る必要が生じるため、会計処理の面でもデメリットとなります。
5.3. 経費計上の制限
法人化すると、経費計上に制限があります。特に交際費の経費計上が制限される点に注意が必要です。法人の場合、飲食代などの交際費を経費として計上することができますが、その計上は最大でも50%までとなります。一方、フリーランスの場合は、ビジネスに関連する交際費ならば全額経費として計上することができます。法人化すると「交際費の計上に制限がある」という点で、「節税」がしにくくなるデメリットがあります。
5.4. 社会保険への加入
法人化すると社会保険への加入が必要です。フリーランスの場合は自身の分だけを負担すればよいですが、法人の場合は従業員の分まで事業主が負担する場合があります。たとえば、健康保険は事業主負担が半分であり、雇用保険は業種によって負担率が異なります。また、社会保険に関連する諸手続きも増えるため、負担が増えるデメリットがあります。
5.5. 給料が固定化される
法人化すると、給料が固定化されます。法人の場合、事業主の給料は役員報酬と呼ばれ、損金になりますが、定期的に同額の給与を支払う必要があります。つまり、毎月同額の給与が支払われるため、給料の変更が難しくなります。一方、フリーランスの場合は自由度が高く、給与の配分に柔軟性があります。法人化するとこの自由度が制限され、給料が固定化されるデメリットがあります。
これらが、フリーランスが法人化する際のデメリットです。これらのデメリットを考慮しつつ、法人化の検討を行うことが重要です。
まとめ
フリーランスが法人化することには、節税効果や給与の控除、経費の幅広がりなど様々なメリットがあります。一方で、赤字の課税や複雑な会計処理、経費計上の制限、社会保険への加入などのデメリットもあります。個々の状況や目標に合わせて、法人化のメリットとデメリットを考慮し、経営戦略を検討してください。専門家の助けを借りながら、スムーズな法人化を進めることが重要です。